美優は安心しきった子犬をそっと抱き上げて、もと来た道を歩いた。

食べ物をあげなきゃ。
直感にそう思って、家に連れて帰る。




美優はこの子犬がほっとけなかった。

人としての感情もそうだけど、一番は自分に似ているって事だ。




ボロボロに傷つけられて、それでも幸せを求めて、公園で何日も吠えてたのかもしれない。

いつか誰かが、自分を必要としてくれると思って、吠え続けて居たのかもしれない。

ただただ、平凡な幸せなが欲しいだけなのに。




これからは大丈夫だよ。
ちゃんと美優が幸せに育ててあげるからね。

美優は子犬をそっと撫でた。




本当は死ぬのが怖かったのかもしれない。今の幸せを無くすのが怖かった。

その美優の気持ちを、この子犬は分かって居たのかな?知って居たのかな?

この子犬がもしあの時、美優を止めてくれなかったら、美優は本当に死んで居たのかもしれない。

こうして、子犬を育てるっていう、美優が"生きても良いよ" っていう、モノをもらえ無かったのかもしれない。

子犬ちゃん、ありがとね。

美優はこれで生きる条件を貰った気がするよ…