その一言で、バッと美優は目を見開いた。

恐怖で手が震える。その手で自分をギュッと抱き締める。強く強く自分が壊れてしまいそうに。




「アイツがくる…」
「アイツがくる…」
いつの間にか呪文の様に唱えていた。




「美優?美優?」
遠くの方から、聞き慣れた竜の声が聞こえてきた。
竜の大きな手が、美優の震えている体を大きく包んだ。
暖かくて、優しくて、涙が出る。




「怖いよ…怖いよ…」

少しずつ自分を取り戻しつつきた美優は、竜にすがりついた。

「アイツが来るよ…私の幸せ無くなっちゃうよ。…怖いよ…私も殺されちゃう。」

自分が発した言葉に、氷ついた。
"殺されちゃう…"
お母さんも毎日思ってたんだろう。こんな恐怖を何年間も。
今度は美優のばんだ。
いつかアイツは絶対美優の前にやってくる。

美優は、おかしくなっている頭で必死に考えた。

嫌だよ…嫌だよ…
死にたくない。

「お前だけ幸せなんて許さない。」
アイツの声が耳元で聞こえた。

ビクっとし、自分を抱き締める力をもっと強くする。
それで、自分の感情を抑え込む様に。自分を壊す様に…