恐る恐る振り返って見ると、お父さんはニヤっと不気味な顔をした。
「何処に行く?」
低い声が玄関に響く。
こんな人が美優のお父さんなの?今まで、怖くてまともにお父さんの顔を見る事が出来なかった。
だけど、思わず釘付けになってしまった…恐ろしいほど不気味な笑顔。
どうして笑っていられるの?お母さん、死んじゃったんだよ?
怖い…怖いよ…早く逃げなきゃ。分かってるのに、今度は恐怖で足が動かなくなってしまう。
お父さんの手がこっちに向かってきた…
いや…いやだ…!
自分の靴を握り持ち、思いっきり玄関のドアを押して、駅の方向に無我夢中で走って、走って、走った。
お母さん…お母さん…
大好きなお母さんを呼びながら…