美優は光輝先輩より酷い事をしたんだと感じるから。
謝るなんてしないで。
まるで、美優だけが悪者になってしまいそう。
「…もう帰った方がいいんじゃない?竜には、私から言っとくから。」
沈黙が続いて、やっとの思いで話しを戻した。
「あぁ…また来る。」
また来るって…
呆れたけど、言っても聞かないと思い、
かわりにため息をついた。
「じゃぁ…」
そう言って光輝先輩は帰って行った。
「美優?」
玄関でボーっと立ち尽くして居たら、慶太がいつの間にか背後に居た。
「ん?なに?」
「あんまり自分を責めんなよ?少しは竜だけじゃなくて、俺にも頼れ?」
「ありがとう。」
「部屋に戻りな。
もうすぐ竜、帰ってくると思うしな。」
「うん。」
美優がこんな所で立って居たら、竜に不信に思われるのは間違いない。
フラフラとした安定のない足取りで、美優は部屋に戻った。
ねぇ、お母さん…
自分を偽るのも。
自分の気持ちを隠すのも。
圧し殺すのも。
苦しいよ…
何ヵ月ぶりだろう。
大好きなお母さんに、こうして問い掛けたのは。
美優はお母さんとの約束を守りたい。
守りたいけど…
どうしたらいいか分からないよ。
幸せ?いい家庭?
分からないよ。
苦しいよ…