美優は素直に謝れた事に、ちょっと罪悪感を感じた。
美優だって我を忘れて、光輝先輩にあたってしまったから。だから、素直に謝った。
「あのさ…」
光輝先輩は言い難くそうに、美優の返事を待つ。
「…はい?」
「"俺の方が分かってない"ってどういう事?」
美優はあんな事を言ったことに、後悔した。
だけど、光輝先輩に美優の過去を話すつもりなんてない。
ましてや、自分の口から言うことはない。
美優は慶太をチラっと見た。
慶太は優しく笑ってくれて、美優の頭を撫でてくれる。
そんな状況を把握しきれない様子で、美優と慶太を見守る光輝先輩。
「美優、部屋に戻りな?」
慶太なりの優しさだ。
慶太は何でもお見通しなんだね。
美優はコクりと頷いて、自分の部屋に戻った。
ベッドに仰向けに倒れ込んで、ため息をついた。
美優は余計な事をしてしまったのかもしれない。
現に光輝先輩と話した事は、自分の溜まりに溜まった、行き場のない感情を押し付ける形になってしまったから。
それに多分、慶太が話していると思うから、美優の過去を知る人が1人と増えてしまった。