慶太は美優を部屋に押し戻して、ドアを閉めた。
少しの沈黙が続く。
「喉渇いただろ?飲めよ。」
慶太はそう言って、何事もなく光輝先輩と美優にジュースを渡す。
飲める気もしなく、貰ったジュースを両手で握りしめる。
慶太は自分の分のジュースを一口飲んで、座り直した。
「さっきの事、きちんと話してくんない?」
その言葉を向けられたのは、美優ではなく光輝先輩。
光輝先輩は、
「分かった。」
と言って、竜が美優に話してくれた事を順序よく慶太に話していく。
尚さんが竜の元彼女だと言うことは、慶太は知っていたみたいだった。
尚さんが竜のところへ行こうとして、トラックに跳ねられたこと。
その時尚さんと一緒に居たのが光輝先輩だったということ。
辛い記憶を一つずつ思い出す様に、光輝先輩はゆっくり話した。
慶太は"うん、うん"と口を挟まずに、静かに聞いていた。
氷が沢山入っていた冷たいジュースが、氷が全て溶けて暖かくなった頃、光輝先輩の話しは終わった。
光輝先輩は、今気がついたみたいに、美優の瞳を捉えて、
「さっきは、ごめんな。
あんな事言って。
俺どうかしてたわ。人に当たるなんて。」
「こっちこそごめんなさい。」