「昨日竜のヤツどしたんだ?」
「うん。ちょっと私も分からない。」
正直慶太に昨日、竜が言ってた事を話して良いのか迷った。
だけど、竜が慶太に言いたくなった時は竜から話すと思うから、その時まで美優は待つ事にした。
無闇に美優が言ったら、それこそ竜を傷つけてしまうと思うから。
「そっか。」
「うん。」
無言のまま家路を歩く。
ちょっと気まずさもあったけど、それ以上話す事になるのは気が引けるから助かった。
「あれ…?」
慶太がまだ遠い家の前にいる男の子を、見ながら言った。
「どうしたの?」
「光輝だ。」
光輝…?
昨日竜が話してくれた中に光輝先輩って言う人がいた。
厳密に言えば、光輝先輩が竜を傷つけた張本人。
何で、そんな人が家の前に居るんだろう?
また竜を傷つけてしまいそうで怖かった。
美優と打って変わって慶太は無邪気に
「おーい!光輝!」
と言って、駆け足で家の前まで走って行ってしまった。
あの光輝先輩が何しに来たのか知りたくて、美優も慶太の後に続いた。