どんどん足音が近づいてくる。リビングの前にその足音は止まった。直感的に…お父さんが来た!!そう感じた。
早く…早く逃げなきゃ。
分かって居るのに、足が動かない。お母さんを置いてはいけない。でも、お母さんの言う事を守らなければならない。
美優は迷った。このままお父さんに見つかって、お母さんの様な毎日を過ごすのか…それとも…?
美優の居場所なんてモノは、ここしかない。まだ先が分かっている辛い日々を選ぶのか。それともお母さんが与えてくれた新しい日々を選ぶのか。だけど、もう選ぶ時間などない。
だったら…お母さんの言った事を守ろう。まだ少しでも感じる光を求めよう。
美優は、素早く台所から繋がっている洗面所に身を隠した。洗面所のもう1つのドアの向こうには、玄関がある。
リビングのドアを開ける音… 美優は息を潜めた。更に手の震えが増してきた。
お父さんがリビングに入ったのを音で確認した途端…
美優はおもいっきりドアを開けて玄関まで走った。
その時――
後ろで、リビングのドアを開ける音がした…美優の足音が廊下を響かせせいで、お父さんに早くも見つかった。