「お母さん…死んじゃやだよぉぉー!」
その恐れていた事が、声に出る。"お母さんがいつか死んじゃうじゃないかって"毎日怯えていた。それが今なの?今日なの…?
「美優…お母さんの言う事をよく聞くのよ…?」
「…うん。」
お母さんは力の無い手で私の手を握ってくれた。
「食器棚の上に、封筒があるの…その封筒をとって…?」
「…うっ…ん」
「封筒の中に大切なモノ…入ってるの…バックに封筒を入れて…すぐこの家を出たら…駅に行って…」
声にならない悲鳴をあげながら、お母さんは喋り続けた。
「…えっ…?お母さんは?」
「駅前のタクシーにすぐ乗って…封筒の中にある…住所の紙を…タクシーのおじさんに渡してね…」
「…お母さんも?…」
「封筒の中身は大切なモノだから…絶対に無くしては駄目よ…?」
美優の質問に聞こえてないフリをしているみたいだった。その質問は答えられない、そんな表情で。
美優ももう言うのはやめた。美優が壊れちゃうと思ったから。ただ単純に怖かった。
「さぁ…早くバックを持ってきて…?お父さんが帰ってくる…」