お父さんのせいで…
お母さんは、美優の大好きなお母さんが死んでしまった。
今頃アイツは笑ってるのだろう。アイツと同じ苗字なダケで、身震いしてしまう。
気持ち悪い。あんなヤツが美優のお父さんだったなんて…考えたダケでも嫌気がさす。
アイツは他人…アイツは他人…
呪文の様に美優は自分に言い聞かせた。
アイツ…
齋藤 武(サイトウ タケル)を美優は…"一生許さない。"
さっきまで"お父さん"だった人が、一瞬にして"齋藤"と言う他人に変わった瞬間だった。
齋藤を許す日はこないと思う。だけど、どこかで願っていたのかもしれない。他人と自分では決めつけたとしても、父親は齋藤しかいない。いつか許せる日がくると信じて…
この日を最後に、齋藤の事を考えるのは辞めにしよう。
新しい環境に、今の気持ちを持ち込みたくなかった。この記憶は消したくても、消えない。消えないに決まっている。
だけど、もう嫌なんだ。
少しは光が見える、お母さんが与えてくれた最後のプレゼント。大事にしたいから。
美優は心に誓った。