「美優、久しぶりだな。」
優しく齋藤は美優に微笑みかける。ゾクッとする笑みで、そっと一方前に足を進めた。
それに習って美優は、後退りする。
こんなところで捕まってたまるか!
そんな思いが美優の頭を駆け巡る
でも、足は動かなくて、ただただ齋藤を見ることしかできない。
今にも手が伸びて、美優を連れ拐いそう。
「美優、寂しかっただろ?お父さんと離れて。」
「ん?なんだ?嬉しすぎて言葉が出ないのか?」
「もう大丈夫だ。さぁ、早くお父さんと帰ろう。」
ガクガク怯えている美優に気づいていないのか、いるのか、齋藤は不気味な笑みで美優に近寄ってきた。
嫌だ…
嫌だ…
周りには誰もいない。誰も助けてなんかくれない。
そう思った。
このまま美優は、齋藤に連れ拐われる。のかな?
怖くて怖くて仕方がない。頭によぎる家族の顔。
齋藤だった、家を知っていてもおかしくない。
だったら…
だったら…
このまま…
美優は齋藤のスキを見て、いっきに駆け出した。