怖くなって、美優は震えながらも足を前に進めた。

冷静に。慎重に。
こういう時っていきなり走り出したら、駄目なんだと思う。多分。

今の距離を一定に保つしかない。






1人じゃ心細くなり、着信歴から竜の名前を引っ張り出して、電話をかけた。


「…竜?」

だんだん不安になってくる。コールを鳴らしてもなかなか出ない。

「もしもし、美優?お前どこだよ?」

こっちのセリフだよ。竜こそどこだよ?

「竜…早く来て。」

「はっ?場所は!?」

「さっき言った所を真っ直ぐ歩いてるだけだよ…。」

「じゃもうすぐ追いつくから。待ってろ。」

「うん。早くね?」

「あぁ。」


心細くて電話をかけたのに、呆気なく切られてしまった。でも、もうすぐ竜がくるから大丈夫。

あえて、携帯を耳に当てたまま美優は歩く事にした。

機械音がリアルに怖さを引き立ている気もしたけど、誰かと電話しているフリをしていれば、少しの間でもこの距離を保てる事ができると思った。