「私、校門前に行ってビラ配って来まーす」
 
片手を高く掲げ、クラスの皆に向かって由実は声を残していった。他のクラスメイトも皆、彼女と同じような人形の格好をしている。

“いい男狙って来いよ~!”なんて声が飛んできた。

「紗生ちん、せっかくのメイド喫茶なのに、法被姿なのね」
 
同じくメイドの格好をした有希が接近し、私を小突いてくる。瞳はメイクばっちりで、そのくりんと回した瞳の上の睫毛にもマスカラがこんもりと塗られていた。
 
私は文実なのでいつも通りのスッピンに、何の可愛げもそっけもない青い法被をセーラー服の上に羽織っているだけだった。

「ねー。紗生ちゃんなら素で綺麗だから、メイド服着ると華麗に変身しそうなのにねー」
 
と、わらわらとひとが群がってきた。

「や……メイド服はちょっと……」
 
私のキャラ的に抵抗がある。

「紗生のメイド姿見たーい」
 
じりじりとメイド軍団が私ににじり寄ってくる。