ふとベッドの上に置いてある大きなうさぎのぬいぐるみが視界に入った。私はそれを手に取り、南生に渡してやる。伊津くんが南生にプレゼントしたものだ。
 
南生はそのぬいぐるみを受け取らなかった。ぺしっとうさぎのあたまを叩きもした。
 
私は仕方なく邪険に扱われたその可哀想なうさぎを抱いてやった。

「だって、そんなの、いやよ。他の女の子と……他の女の子と、仲良くするだなんて……うわあああん」
 
普段は落ち着いていてしとやかな南生なのに、まるで子どものように泣きじゃくる。

「解んないよ? 行ったのってカラオケでしょ? どの女の子とも話さなかったかもしれないよ」

「だけど、隣に座っていたのが、女の子だったら? そんなに接近していたなんて、もし、手が

ふとした瞬間に触れたりしたらなんて、考えるだけでも私は平常心じゃいられなくなるわ」
 
ぐしぐしと洟をすすって南生はヒステリックに云う。
 
恋はひとを変える。あんなに穏やかな南生を、ここまでも変えてしまう。