大地は笑ってごまかす。

「でも、きっと解るよ」

「じゃあ、今度、家に遊びにおいでよ。南生と紗生が美味しいスコーン焼いてくれるよ」

「ははは。玖生は?」

「私は……食べる専門」

「甘いもの苦手なのにか」

「うちの姉たちのスコーンは格別だよ」

「ははは、そっか」
 
大地は笑う。
 
優しい表情で、笑う。

「じゃー、これからファミレスで腹ごなしした後、指輪でも見に行くか」

「指輪、したことない。何か、飼い猫ですって首輪つけられてる気分」
 
私は照れくさくてそんな事を言ってしまう。本当は凄く嬉しいはずなのに。

「だって、玖生は俺の飼い猫だもん」

「にゃに~?」

「ははは。そら、行くぞ」
 
大地が私に手を伸ばしてくる。私はちょっとまだ躊躇しながら、彼の手を取る。
 
大地は夕暮れの日差しに染まっていて、黄金色に輝いて見えた。
 
私の目だけに。私の為だけに、大地という宝石(いし)は光っていた。