「血は止まったみたいだな。ほれ、次は手だ。出して」
 
私は無言で血まみれの手を差し出した。

「せっかくのネイルが血で染まってるよ」
 
大地はかいがいしく私を綺麗にしてくれる。まずは爪先から血を落としてくれた。
 
大地の水色のハンカチに、私の紅が付着する。申し訳ない。
 
大地は丁寧に優しく、まるでガラス細工を扱うかのように拭ってくれている。

「宝石みたいな爪だな」
 
その姿を現した私の指先に、彼は嬉しいことを言ってくる。

「そうなの! 宝石みたいでしょ。だから私、ネイルが好きなの」
 
恐縮していて無言だった私から、やっといつもの私に戻って声を発した。

「ピンクが好きなのか? ……そのうち、本物買ってやるよ」

「何を?」

「ローズクオーツ? ピンクダイヤ? 宝石(いし)つきの指輪だよ」 

「本物の宝石?」

「そうさ。本物の。それとも鼻血色のルビーとか? ははは」