「鼻だってば。顔、血まみれ」

「ああ……」
 
私はどうしていいのか解らず、また手で鼻を拭ってしまう。その手を確認すると、手までもが紅い血でべとべとだった。

「そこの公園に行こう」
 
大地が繋いでいた手をぐい、と引き、ずんずんと小さな公園へと先導してくれた。

「おまえ、ハンカチとか持ってねーの?」
 
公園のベンチに座らされ、私は大地のハンカチで顔を拭ってもらった。
 
そこの水飲み場で濡らしてくれたハンカチはひやりとしていて、何だか一気に我に返った感じだった。
 
鼻血だなんて、情けないし恥ずかしい。

私はベンチに座っていて、顔をつい、と上げ、大地は私のまん前でしゃがみこんで私の顔を拭ってくれている。

「俺でもハンカチぐらい持ってるのに」

大地は苦笑して云う。

私は逆に、男の子でハンカチを持っている方が珍しいと思ったし、逆に持っていない私が玖生(ワタシ)らしいと思った。