「玖生」
 
学校の校門を抜けると、門柱の前で大地が待っていた。
 
女子高の前で待つ、なんてよく恥ずかしげもなくできるもんだな、と自分の彼氏ながらも立派に思えてしまう。

「こ、こんにちは!」
 
私は彼に近づき、片手を上げた。
 
すると周りの下校についている女子生徒が、“男子高の子よ”“ちょっとカッコイイわね”なんて口々にしながら、私と大地に視線を飛ばしてくる。

「なんかよそよそしくないか? 緊張してんの? あれ? もしかして南生さんか紗生さん?」
 
眉を上げて彼は笑い、そして真顔になって尋ねてきた。そうして私の手をぐいっと引いた。

「なんだ、ネイル、綺麗に塗ってるな。玖生でいいのか」

「玖生だよ。南生も紗生も私に扮するなんてことないから」

「そうだよな」

「私になったって、なんの得もしないよ」

「そうだな」