ネイル、綺麗だなって言われた時に覚えた痛み。泣いていいよって云ってくれた優しさ。
 
それは、伊津くんの陰に隠れて見えなかったけれど、私のハートは大地の挙動に感応していたのだ。
 
いつの間にか、好きになってた。
 
私は生まれて初めて、恋の歓びというものを感じていた。上機嫌だった。
 
だから私は、今日もご機嫌でネイルを塗っていた。
 
――ところ。

スパーンと音がして、頭に痛みが走った。
 
古文のジジイに、今日もテキストで頭を叩かれた。

「……古瀬……何度言ったら解るんだ」

「私は逃げも隠れもしません」
 
堂々と云ってやった。

「廊下に立ってますぅ」