「森村くん、相変わらず甘いもの好きだね」

「俺も好きだよ」
 
森村くんに話しかけたのに、大地が返事をした。

「私は甘いものはちょっと。でもお腹減ったな。ハムチーズのパイでも買ってこよ」
 
朝から何も食べていないのだ。
 
甘いものでも、食べ物を目の前にすると、さすがに私のお腹はくるるっと鳴いた。

「俺、コーヒーのおかわりでももらってこよ」
 
私が席を立つと、大地も同時に立った。
 
いってらっさい、と森村くんはその身体のように細くてしなやかな手を振った。
 
私はそんな森村くんに背を向けると、こそっと大地に耳打ちをした。

「云わないでね。森村くんには」
 
大地はそのぐりぐりした大きな目を私に向ける。そして、小首を傾げた。

「この間、私が泣いていたこと」
 
伊津くんのことで、私は泣きながら街なかを駆けていた。そんな時、大地と出くわしたのだった。