私はその気持ちを吹き飛ばすかのように携帯を手にした。

“今から遊びに行こーよ”
 
北高の森村くんに超高速でメールを打った。
 
その間に、さっと着替えを済ませた。
 
返信が来る頃にはもう、出かける準備ができていた。

“OK。駅前のミスドで、30分後に”
 
森村くんからオッケイのメール。
 
そしてまた、自分のピンクの爪に目が行った。
 
――そうだ。

『私は、逃げも隠れもしません』
 
古文のジジイに、授業中ネイルを塗っていた時に私はそう言い張ったのだ。
 
なのに、私は今、逃げて隠れている。
 
伊津くんという存在から、逃げている。
 
ダメじゃん、私――。
 
唇をきゅっと噛み、私はその思いを振り払うかのように、部屋のドアを勢い良く開け、南生にも紗生にも何も言わずにそのまま駆け足で家を出た。

もう私、ピンクのネイルは使わない――!

伊津くんの笑顔が、胸に突き刺さるから。