甘くて、痛かった。
 
もう、顔もつき合わせたくない。
 
伊津くんに、会いたくない。
 
顔を合わせる度に、会話を交わす度に、苦しくなる。
 
私に優しい言葉をくれると、決まって南生のことがひっかかる。
 
南生と同じ顔をしているから、優しくしてくれるのだろう。
 
いや、彼の天性の性格なのかもしれない。
 
けれど、いくら優しい言葉をかけられても、伊津くんは南生のものなのだ。
 
南生は私より、もっともっと優しい言葉を伊津くんからかけられているのだろうと思うと、嬉しさは悲しさに変わる。
 
もう、嬉しい言葉をかけないで欲しい。
 
もう、伊津くんとは一緒にいたくない――。
 
私は手の爪を見てみた。
 
小指だけが赤で、その他はさくら色。
 
伊津くんが私のイメージカラーだと云ってくれた、ピンク色だ。
 
つきん、つきん。胸が痛い。