「すみません。進路は国立大に変更します」
 
私は平身低頭だった。ほんとに先生には迷惑をかけた。
 
二堂先生は、うーっと伸びをする。その涼しげな目が三日月になる。

「でも、まあ……。淋しさゆえの行動で、俺も自省したよ」

「は? はぁ……」
 
私は今度は首を傾げた。

「彼女とヨリ戻した。俺が忙しくて構ってやれなかったから、あいつも情緒不安定だった……まあ、こんなこと生徒に話すことじゃないかもしれないが」

 二堂先生は照れたように頭をぽりぽりと掻く。

「よかったね、せんせ。どうぞお幸せに」

「せんせ、じゃなくて先生、だろ。それにタメ口利くな」
 
いつもの二堂先生に戻っていて、私は何となく安心したのだった。