いつもの優しい直哉くんだった。
 
行こうか、と云われて私たちは歩みだした。

「――南生ちゃんの気持ち、考えないでごめんね」
 
おもむろに彼は切り出した。

「僕ばっかり進路勝手に決めちゃって……南生ちゃんを縛りたくなくて“好きにしていいよ”なんて云っちゃったんだけれど」

「そうなの? 私はどこか、突き放された感じがしたわ」

「うんうん。ごめんね」
 
朝の空気は冷たくて心地よかった。
 
直哉くんの着ている紺のピーコートが可愛らしく、彼によく似合っていると思った。
 
ぼーっとしながら、横を歩く彼のコートの金ボタンを見つめていた。まるできらきら輝くお星様のようだった。
 
月は昼間でも青く薄く見えることがあるけれど、星はお日様に隠れて見ることができない。だから代わりに、彼の金ボタンがお星様のようで愛おしかった。

「よかったら、一緒の大学、受けない?」

「え?」