直哉くんは見ず知らずの細身の王子顔の先生が気になったようで、まず自分の方から名を名乗った。

「ああ、俺はこいつの……」
 
二堂先生の言葉を振り切って、私は先生の腕に絡みついた。

「この人、私の婚約者!」 
 
私は思わず叫んでいた。
 
熱のせいなのか、進路を勝手に決めて歩んで行こうとする直哉くんに腹を立ててか……。

「ええーっ!」
 
直哉くんと二堂先生の声が重なる。

「おや、どうした?」
 
そこへのんびりとした口調で紗生が登場した。
 
平然としている人が1人、うろたえている人が2人、昂ぶっている人が1人の構図だった。