部活動の指導やら委員会の監視に回っているのだろう、職員室には他の先生は見当たらなかった。
 
遠くの方でつるっぱげの教頭先生が、掃除のおばちゃんとお茶をすすりながら親しげに談義しているだけだった。

「本気って云ってもなあ……」
 
二堂先生は呆れた表情を見せる。
 
何だかさっきから立っているだけでふらふらする。全身が熱いのに寒気を感じる。
 
それでも私は言葉を続けた。

「私は、卒業したらすぐにでも結婚したいんです」
 
語気を強めて云うと、ふらっと足先が泳いだ。

「――古瀬」
 
ぐらついたところを、咄嗟に先生が抱きとめてくれた。
 
一瞬、目の前が真っ暗になって、次に見えたのは視界いっぱいに広がる二堂先生の顔だった。
 
涼しげな目元が困っている。
 
やっぱり、黙っていると王子顔……なんて私は不覚にも胸きゅんしていた。

「どうした?」