立ち去ろうとしない私に、先生は怪訝な表情を浮かべる。そして、固まった表情のまま、小さく聞いてきた。

「見たんだな」

「見た、って、何をですかあ?」
 
私はとぼける。

「携帯を、その、開いたんだな」

「私は開いてないです」

「そうか」
 
先生は肩を撫で下ろす。

「ただ、れみちゃんが開いたのを皆で見ただけです」

「――!」
 
一瞬にして先生の顔がゆでダコのように真っ赤になった。首まで真っ赤になっている。

――可愛い!
 
不覚にも私は、その先生のたじろいでいる様子にこころを奪われてしまった。
 
私まで照れてしまいそうで、両手で頬を覆った。