マナミはすぐ手足が出る。ビンタでも飛んでくるだろうか。
 
私はくっと歯を食いしばった。

「サンキュ~、玖生!」
 
私の思惑とは逆に、マナミからほっぺにキスが飛んできた。
 
何か、喜んでいる様子だった。

「私のアドレス配ったの、どうせあんたでしょ」

「う、うん」

「私の元カレだったのよ。その紙切れ手にしたの。もう元カレのことは忘れようと思って自分のアドレス変えたんだけど、もう一度やり直さないかって、カレからメール来たぁ」
 
ふにゃり、と小造りの顔をとろけさせてマナミは言った。

「ああ……北高の、メガネのひと?」
 
そこら中に名刺を配ったから、誰の手元に行ったのか解らないけれど、マナミの元カレの顔はプリクラで見たことがあった。

「そう。タクミくん。喧嘩別れだったんだけど、今度はうまくやれそうな気がする。感謝! 玖生!」