「私の携帯を返してください、だろ。あやふやに言葉を発するんじゃない。ちゃんと語尾をつけろ」
 
やっぱり鬼教師だ。私はこころの内で呟いた。

「私の携帯を返して欲しいんです」

「それでいい」
 
ふむ、と二堂先生は頷くと、スチール製の机の一番上の引き出しを開けて、私の携帯を手渡してくれた。

「今後は気をつけろよ」

「はい。すみませんでした」
 
私はすぐさま職員室を出て、携帯を開いた。
 
着信メール、5件。
 
私は職員室のドアの前に突っ立ったまま、さくさくとメールを開いた。
 
5件とも、直哉くんからのものだった。

“1限目の古文は眠いよ”

“これから4限目体育なんだよ。ハラヘッタ”

“返信来ないけど、南生ちゃん、どうかした? 具合悪いの?”