私はふああ、とあくびをひとつ。
 
そんなことよりも、私は朝から指先が気になって仕方なかった。
 
ネイルがはがれていたのだ。
 
コットンとネイルリムーバーとマニキュアを持参してきたから、1限目の古文の授業中にでも塗りなおすつもりだった。
 
1限目の古文、なんて念仏を聞かされているのに近いものだ。
 
せっかく眠りから覚めて仕方なく学校まで来たのに、また眠りにいざなうなんてまったく酷い仕打ちだ。

「玖生っ!」
 
ぷらぷらと教室へ入るなり、私はクラスメイトのマナミから熱い抱擁を受けた。
 
ヤバッ。
 
マナミのプリクラを貼って、携帯のアドレスを載せた名刺を、この前川向いの男子校生に配ったことを瞬時に思い出した。