モールを出て、連れてこられたのは近くの公園だった。
 
公園、といってもジャングルジムなどの遊具は一切無く、一面芝生になっていて、そこで小学生がサッカーをしたり、大人たちがフリスビーをしたり、犬の散歩道になっているようなわりかし広い公園だった。
 
直哉くんに促されるまま、木陰の目立たない場所のベンチに座らされた。
 
陽の光が当たらないと、少し寒く感じられた。
 
秋は深まっているのだ、とちらりと思ったけれど、今はそんなことはどうでもよかった。
 
直哉くんはベンチには座らずに私の目の前に立って、しばらく黙っていた。
 
私がしゃくりあげると、長身を折りたたんでコットンパンツのポッケからハンカチを差し出してくれた。
 
私はそれを受け取り、目頭に当てた。

「どうしたの、南生ちゃん」
 
もう一度彼は同じことを尋ねてくる。
 
心底心配しているような声音だ。

「いやよ」