その自然な仕草にもどきっとしてしまう。
 
手を繋ぐ、なんて今まで何百回もやってきたことなのに、その触れる瞬間は否応なくときめいてしまうのだ。
 
そんな余韻に浸っていると、夢心地な雰囲気をかき消す声がしたのだ。

「あれぇ、伊津っち」
 
甲高い覇気のある女の子の声だった。
 
その声の主はずかずかと歩み寄ってきた。後ろにもうひとりの女の子を従えていた。
 
2人とも髪を茶色に染めていて、若干化粧もしているようだった。
 
目の回りが異様に黒くてぱっちりとしている。

「ああ、先日はどうも」
 
伊津っち……直哉くんの苗字を親しげに呼ぶ。この子たちは一体誰なんだろう。
 
先日はどうも……私のハートはざわめく。どうやら顔見知りの人らしいけど、私は握っている手に思わず力が入る。
 
その繋いでいる手をちら、と見て、髪の毛がストレートロングのはきはきした、所謂美人系の女の子が言った。

「なんだあ、伊津っち、彼女いるんだあ」