あたまから紐が出ていて、それを引っ張るとイモムシがころころと歩き出す単純なものだった。
 
かわいい。子どもはこういうものを喜ぶのね、なんて慈しみを覚えた。

「それが気に入ったの?」
 
直哉くんが背後から声を発する。

「木でできてるおもちゃって、なんだか優しいわね」

「そうだね。何だかあったかいね」
 
長身を屈めて、直哉くんは私と同じようにイモムシのおもちゃをひっぱる。
 
私も子どもができたら、こういうので遊ばせたいな。そういう思いが浮かんだ。

無邪気に遊ぶ子どもの様子を、私はにこにこと見ていて、直哉くんは我が子を可愛い可愛いって写真を取りまくるんだわ、きっと――そんな夢想をしていた。

「南生ちゃん、ほら、うさぎ」
 
ふと目の前に差し出されたのはこれまた木製のうさぎのおもちゃだった。
 
胴体も顔もなめらかな木でできている。
 
胴体と首を繋いでいるのはバネで、手を触れるとびよびよと顔が震える。

「可愛い」

「可愛いよね。欲しい?」