私たちは目的もなくつらつらと歩いていた。
 
1Fの洋服の店舗をひととおり回って、ここに用はないと思うと、エスカレーターで2Fへ上がって行った。
 
何気なしに歩いていると、私の目をひくものがあった。店内はガラス張りで、中の様子が見て取れた。
 
そこには“木のおもちゃ専門店”なる木製の看板があった。

「直哉くん、ここ入っていい?」
 
すると彼は私と同じようにくるりと店内を見、看板を見て、ふむ、と頷いた。

「いいよ。入ろうか」
 
店内は子どもで溢れかえっていた。
 
木のおもちゃ専門店、と銘打っているだけに、木でできたもので溢れかえっていた。
 
ある子どもは木製のバギーに乗り、店内を暴走していた。階段のドミノ式のおもちゃに手を伸ばしている子もいれば、木のパズルに興じている子どもも見受けられた。
 
けん玉を真剣に操っている大人もいた。
 
私は陳列されていたあるおもちゃに手を触れた。
 
イモムシの格好をしたもので、丸い玉が4、5個連なり、先頭には目と口が可愛らしくペイントされていた。