「お菓子固まるまであと2時間ぐらいかかるのよねぇ」

「そうなんだ」 
 
彼はぱたっと教科書を閉じた。

「じゃあ、どこか出かけようか。天気もいいし、風もないから今日は暖かいよ」

「うん。お日様に当たりに出かけましょうか」
 
私と彼は瞳を合わせ、外にでることにした。
 
両親は不在だったから、家の鍵をきちんと閉めた。
 
両親と、私と、紗生と玖生。それぞれ5人がこの家の鍵を持っている。
 
白いブロック塀に、なんてことない黒い門に、家へと続く砂利道がある、何の変哲もない家。
 
けれど、家の中は毎日ドラマで溢れかえっている。
 
お父さんはまったくお酒が飲めなくて、夜にはいつもホットミルクを飲んでいるとか、お母さんは夜更かしが好きで、録画した韓流ドラマを見ては夜な夜な涙を流しているとか。