不安なまま ポケット探り 苦いタバコくわえてた 僕らはどんな答えを知るだろう
バスは通り過ぎる 殴り書きに消えた 思い――。
 
私は、大好きな歌を熱唱していた。
 
大地と2人きりのカラオケの室内。
 
立ったまま歌いながら、私は大地の様子を伺い、おやっ、と思った。
 
大地が私の歌う曲をなぞらえて口ずさんでいたからだ。
 
曲が終わり、私は大地の隣にぽすん、と座った。

「今の曲、知ってるの?」
 
20年も前にヒットチャートにのった歌だ。

「黒沢健一だろ。俺、好きなんだ」