卵とグラニュー糖がまんべんなく混ざったな、とハンドミキサーを止めると、玖生は直哉くんに敬礼し、リビングからトタトタと出て行ってしまった。
 
紗生も直哉くんに片手を挙げ、ソファから立ち上がって行ってしまった。
 
それと同時に、私のこころのもやもやも消え去ってしまった。
 
やっと、私だけの直哉くんに戻った。
 
近頃、玖生は彼に馴れ馴れしいし、紗生は色々と詰問しているもんだから、直哉くんの彼女の私としては気が気じゃないのだ。

「直哉くん、紗生たちどこ行ったの?」
 
私はリビングの対面キッチンから声を飛ばした。

「デートだってさ。2人とも。紗生ちゃんにも玖生ちゃんにも彼氏できたんだねぇ」
 
直哉くんは嬉しそうにも悲しそうにも云う。
 
今、私たち3つ子は同じ私立の女子校に通ってるわけだけど、公立の中学校時代は、1年生の時は玖生と、2年の時は紗生と、そして3年の時は私と、直哉くんは同じクラスだった。
 
紗生たちとはただのクラスメイトだったみたいだけれど、彼女らが私より先に知り合いだったというのが少し悔しい。