いつもの私に戻らないと。いつもの、飄々とした私に。

「いきなりだな。いいよ。俺、玖生と接してみたいと思ってたから」
 
玖生――初対面なのに、呼び捨てだ。
 
イケメンなのに、私なんかに興味を示す、変わった奴――。

「私のこと、森村くんから何て聞いてたの?」
 
私は落ち着きを取り戻し、彼と肩を並べて歩き出した。
 
何だか初対面な感じがしない。
 
きっと、私と同じように彼も物怖じしない性格なのだろう。
 
肌が合う。昔から愛用しているバスタオルのようだ。

「まんま。君が自分で感じてる言動の、まんま」

「そっか。なら気楽だ――君、名前何ていうの?」

「大地」

「大地ね。覚えた」
 
目鼻立ちが整っていて、どこか気品が漂うのに、草のにおいのする名前だ。
 
おおらかで、逞しい。
 
背が高いのに、どこか可愛らしい伊津くんとは対照的な人間だと思った。
 
伊津くん――彼の影が過ぎって、私はまたチリチリと胸が痛んだ。
 
私はそれを振り払い、下唇を噛んだ。