「自分に素直なところとか、自由奔放なところとか、森村くんと仲がいいところとか」
 
素直でいよう、そう思えたらすらすらと本音が出てきた。
 
壁をとっぱらってしまったら、通過するには容易な道が見えた。

「……最初は、紗生ってなんかミステリアスでさ、何考えてるか解んねー奴で、面白半分で、俺とつきあわないか、なんて云ったんだ。いくつもの口説き文句も、正直冗談半分だった。でも」
 
彼は言葉を一旦区切ると、私の目の前に顔を近づけてきた。
 
私の胸はズキドキと暴れだす。

「今は、こうしてみると、ドキドキする」

「私も……ドキドキする」
 
クスリ、と彼は笑う。
 
その薄い唇から生まれた息が、私に吹きかかる。

「な、言ったろ。そのうち俺とつきあいたくなる、って」

「うん」
 
玖生にも言われたことがある。私の気持ちはやがて恋になると。