玖生はまたおやすみを言うと、そのまま階段を上がり、自分の部屋へと行ってしまった。
 
人生、もっと素直に……。
 
私は今まで、素直に生きてこなかったのだろうか。自問自答してみる。
 
玖生の言う通り、学級委員や文実だって、やりたくてやったわけではない。
 
私のやりたいこと、やりたくないこと、素直になることって、何なんだろう。
 
階段を軽いステップで上っていく玖生の後姿を見ては、立ち尽くし、考えていた。
 
思えば拒絶したのは、まだ出会って間もない時に、森村くんにつきあおう、と言われて全力で否定したことだけのように思う。
 
それはまだ、彼を意識してなかったことの話で、今は――。
 
――今は。