「どうして泣いてるの」

「何で私のこと知ってるの」
 
私は質問を質問で返した。

「森村、知ってるだろ。あの目の厳つい、いかり肩の」
 
森村くんとは、私の通っている女学院の川向いにある男子校――北高の子で、昔私が街なかでナンパした子だ。
 
今まで声をかけた男の子の中で、一番仲良くしている男友だちだ。

「俺、森村とダチでさ、君のことプリクラで見たことがある」
 
ゲーセンに行った時に、ノリで森村くんとカップルよろしくプリクラを撮った覚えがある。

「痛い……離せ」

私は掴まれたままの腕を振り払った。

「悪ぃ」
 
私はずずっと鼻をすすった。

「カラオケでも、行く?」
 
私は唐突に、そして無理矢理笑顔を作って言った。