私と同じカタチをしたその目の前の個体に、じらじらと嫉妬してしまう。

「アイスならもうないよー」
 
私の思惑などに気づかずに、さらっと玖生は言う。

「別にいらない」

「――紗生ってさ、欲しい時に欲しいって言わないよね」

「は?」
 
玖生は瞳をくるんと回す。

「なんつーか、自分の意思表示がないっていうか。本当はこのアイス欲しいでしょ」
 
彼女の言い分には虚をつかれた。
 
確かに私は、喉が渇いていた。玖生が美味しそうにアイスを食べているのを見て、ひと口だけでも欲しいと思っていた。

「欲しいものは欲しいって言わないし、やりたくもない学級委員やら文化祭実行委員やらしぶしぶやってるし」

「しぶしぶなんかじゃ――」
 
ないわ、と語尾を口に出す前に玖生に遮られた。

「人生、もっと素直に生きればいーのに。私が紗生だったら毎日キュークツで仕方ないわ。おやすみ」