すると彼はくすぐられてのた打ち回りながら答えた。

「ああ、もちろん、ひぇっ、好きだよ」

「何ぃ? 人の彼女を……」
 
大地くんはふざけながら森村くんの足をくすぐるのを止めない。

「あひっ、とも、友だちとしてだってば。決まってるだろ。ひっ、ひっ、あいつ、面白いし」
 
私はその場から逃げたくなった。
 
これ以上、聞きたくなかった。
 
私は別に、面白みのある人間じゃない。姉妹なのに、私と玖生はかすりもしないのだ。
 
私はすっとその場を離れようとした。

「お大事に」
 
そう言い残すと、くるりと彼らに背を向けた。

「あれ、紗生ちゃん。どうかした?」
 
大地くんの不思議そうな声が後を追ってきた。
 
森村くんは何も声を飛ばしてこなかった。