森村くんは口を手で覆い、ふあぁぁぁとあくびをしたかと思うと、そのまま私をチラリと見た。
 
どくっ、と私の胸が鳴る。やっと、初めて私を見てくれた。
 
そして何かを云わんと、口許から手を放したところだった。
 
ぐらり、と彼の長細い身体が揺れた。かと思うと、ずるっとその場にうずくまった。
 
すかさず大地くんが手を伸ばし、彼の腕を支えた。

「森村くん!」

「森村、おい」
 
私と大地くんが驚いて声をあげる。
 
彼は青白い顔をしたまま、うなだれている。

「保健室……保健室、連れて行きましょう」
 
私が叫ぶように提案すると、大地くんはうん、と頷いた。

「おい、森村。立てるか?」
 
大地くんが支えている腕とは反対の彼の腕を取った。

「落ち着いて。深呼吸して。ゆっくりね」
 
ああ、と力なく森村くんは頷いた。