私、おかしい。おかしいよ、私――そんな感情が頭の中を行き交う。

「今日はもう帰るの?」

「うん。大地くんは、玖生と待ち合わせ?」
 
私は平静を装って返した。

「いいや、あいつ、クラスメイトとボーリング行くってさ。今日はフラれちゃった」
 
大地くんは笑うとキリリとしたハンサムが童顔になる。そんなことを思ったけれど、私の意識は彼の後ろの森村くんに向いたままだ。
 
けれど、私は森村くんに話しかけることはできずにいた。私としたことが珍しく緊張していたのだ。
 
全身がずきんずきん云って、立っていられるのがやっとだ。

「たまたま通りかかったら、紗生ちゃんに会うんだもん。何かの縁だよね。せっかくだから、一緒にお茶でもどうかな」
 
それは、森村くんも一緒ってことなのか。それは嬉しいことだけれど、どこかやっぱり気まずいままだ。

「なあ、いいだろ、森村」
 
振りかぶって彼は森村くんに意見を求める。