それからめっきり、森村くんは私の前に姿を見せなくなった。
 
それはそれで、何となくほっとしていた。その反面、彼に会いたいという渇望さえ抱くようにもなったのは事実だ。
 
彼のことを思うと、ぽっと心に火が灯るようになった。何故だろう、胸が痛い。
 
これが南生や玖生が云うような恋というものなのか。
 
ほっぺにキスをされたぐらいで、子どものような表情を見たぐらいで、こころが傾くのも我ながら単純だと思う。
 
私にはこの感情が恋なのかどうか、まだ解らなかったけれども、風の行方を探すように彼のことを思っていた。