私はまじまじと彼の顔を見つめるばかりだった。森村くんも自分で自分の行動に驚いたらしく、目を見張ったまま私と見つめあっていた。
 
そしてやがて、彼の顔がみるみると赤く染まっていくのが見受けられた。

「……なんか……ゴメン」
 
彼は自分の行動を詫びた。私は赤くなっている森村くんの顔を見て、胸がきゅうとなるのが解った。
 
可愛らしい、子どもみたいな表情を見せたのだ。その薄い口を真一文字に結び、いたずらがばれた子どものような無垢な表情だった。
 
私は甘くて美しい、胸の痛みを感じていた。
 
どっどっどっと胸は高まるばかりで、身動きがとれなかった。
 
森村くんは顔をそむけた。私はその端整な横顔を見つめるばかりだ。
 
普段は透き通るほど色白な彼が、いつも飄々としている彼が、今は顔を染めて、照れている。
 
私も同じようにつられて照れてしまう。
 
頬に残る、彼の唇の感触。その患部はあたたかくて、痛かった。

「俺……行くわ」
 
真っ赤な顔をしたまま、彼は立ち上がり、身を翻して走り去ってしまった。