「うわっ」
 
空に彼の顔を思い浮かべたその刹那、森村くん本人が私の視界に入ってきた。幻かとも思われたけれど、そこには影があった。
 
私は思わず芝生の上に大の字に圧倒されてしまった。

「どっ、どうしてここに」

「紗生のクラスに行ったら、ここにいるっていうからさー」
 
のんびりとした口調で彼は云う。私の鼓動はどっどっと早まる。

「こっ、ここは女子校よ。よくもまあ……」

「紗生、ほっぺにご飯粒」
 
私の言い分には答えずに、彼は真顔でそう言うと、私のほっぺをぺろっと舐めた。
 
そのしなやかな肢体が、私に覆い被さる。

「――!」
 
私は驚いて何も云えなかった。
 
一瞬、何が起きたのか解らなくて、それで、フリーズしてしまった。
 
も、森村くんが私の頬に唇をつけたのだった。そのことを、しばらくして認識した。