好きだ、つきあおう、と云われて何の感動もなかったことは確かだ。

「恋になるよ。きっと、恋になる」
 
どこからそんな根拠が出てくるのか、玖生は断言してみせた。

「2人、似てるもん。どことなく」

「私と、彼が?」

「うん。先に魅かれた方が森村くんだっただけであって、紗生はまだそれに気がついてないだけなんだよ」
 
玖生の瞳には淀みがない。玖生って瞳がキラキラしていて綺麗だなって思った。

彼女のその綺麗に塗られたネイルのように、小さな宝石がその瞳に棲んでいる。
 
南生の瞳も綺麗だ。涙で濡れたその宝石。3つ子だから、私の瞳もキラキラしているのだろうか。いや、きっと輝きなどしていない。
 
だって私は、恋をしていない。恋をすれば、私の瞳にも宝石が宿るのだろうか。
 
開け放したカーテンの向こう、ふと気がつけば三日月がウインクしていた――。