「なにー。紗生。恋の悩み? キャハ。森村くんのこと?」
 
玖生は横に寝転び、肩肘をついて顔を持ち上げ私をらんらんとした目で見る。

「なに? うまくいってるの、紗生。なんだか文化祭の時から、森村くんってあなたにつきまとっていたものね」
 
南生は何だか嬉しそうに云う。

「恋って、何? どんな感情?」
 
私は子どもじみた問いを2人にまた投げかける。

「私は……初めは気の合うひとだなあって思ったの、直哉くんのこと。それから、いつの間にか仲良くなってから、ああ、ことひとともっと一緒にいたいなあって思うようになって……」
 
真剣に言葉を返してくれる南生。そして言葉に詰まると、なんと彼女はぽろぽろと涙を零し始めたのだ。

「いやね。涙なんて。幸せなの。私、直哉くんのことが好きで、幸せ……」
 
出た。南生の幸せボケが。色恋ボケとでも云うのか。この子は伊津くんを思ってよく涙するのだ。
 
嬉しい時も、悲しい時も、すぐに泣く。か弱い南生。